ジロ・デ・イタリア、世界の三大サイクルロードレースのひとつで、100年の歴史を誇るこの大会の中で、伝説と呼ばれるレースがある。それは1988年5月6日の第14ステージだ。
この日、イタリアで最も知られる登り坂のひとつ、ガヴィア峠に挑むこのステージは、突然の大雪に見舞われた。チームの多くは選手に防寒具を準備することができず、みな気温0度を下回る悪天候の中、半そで姿で標高2,621にあるこの峠の頂からのダウンヒルを余儀なくされた。雪の女王が支配するこの過酷なレースを、セルジオ・フィナッツィも戦った。
1987年にプロデビューした彼は、ティレーノ・アドリアティコのステージを勝利するなど活躍するも、1990年には引退して、2年後には地元ベルガモで自転車メーカーを立ち上げる。そして、このメーカーに、現役時代に経験したあの忘れられないガヴィア峠のネーヴィ(雪)の名をつけた。この当時は、スチールに続いてアルミニウムが新素材として台頭し始めていた。クロモリのフレームはどこでもやっている。 フィナッツィは他社との競合を戦い抜くため、チタン専門の自転車メーカーになることを決める。
溶接などチタンの加工や製造に関して、全て独学で習得したというから恐れ入る。
現在、彼は創業時の選択は正しかったとあらためて確信しているだろう。NEVIはロードバイク、グラベルバイク、MTBなど5種類のチタン製バイシクや、その関連パーツ(ステム・シートピラー・エンドパーツ等)を自社で製造するだけでなく、他分野におけるチタン製品も製造する企業に成長し、その分野は二輪四輪自動車、医療、食品、化学など多岐にわたっている。 実際NAVIは、小さな自転車工房のイメージとは少し違って、それはむしろ、モダンな設備を誇る立派な工場だ。